「オリジナリティー」について

余談になるが、もう少し「オリジナリティー」について書きたい。最近は年末のある団体のイベント準備に追われる日々である。その中で手作りのクリスマスカードを5軒の特別養護老人ホーム入居者の方々に贈ると言う企画を行う事となった。まずは僕が作ったクリスマスカードのサンプルを社会福祉協議会に持って行き、

PRをお願いした。すぐに2校の小学校から協力の返答をいただき、僕達は、その1校の小学校の授業におジャ魔した。

僕の住むないの小学校では、「総合授業」としてあるテーマを決めて学年間でグループを作り、その授業内で活動を行うということが行われている。僕らの企画に協力してくれたのは「一人暮らしのお年寄りの方々に手紙を書く」という活動をしている5名の子達だった。彼らはもう既に2枚のカードを作ってくれていた。それは平面の絵だけではなく、一度紙にシワを入れて表面に表情を入れたり、色紙やリボン、綿などを使った凝った素晴らしい作品だった。

ただ気になったのは、その2枚とも同じ作りの作品だった事である。

せっかく贈る物だからと、あまりにも安直なカードが作られる事を心配した僕は、サンプルには可能な限りのアイデアを入れてみた。今日の為に「とびだす絵本(笑)」をコミックGONの特集号を参考にして作った(ちなみに「とびだす絵本」の名は登録商標らしい)。少し説明をして「カードを作ってみよう」と言うことになった。するとその子達は僕の見せた見本とは関係なく、皆同じ作りのカードを作り始めたのだった。

僕達の横で、「紙芝居をする」というグループが絵を描いていた。見て驚いたのは、その絵が一見子供の絵のように見えながら「テクニカルな絵」に見えた事だった。学校の廊下や教室の壁に、生徒達の作品が所狭しと飾られている。それらのほとんどが造形的にも整った物であり、一応絵画専攻だった僕の目には構図や色彩構成が単純ではあるが「計算されている」物に映るのであった。今の子供達の才能に舌を巻く思いだった。

僕が小学校4年生の時は、おそらくこんなに上手く色使いが出来なくて、白・灰・黒などの無彩色や茶色を主に使っているか、原色をバラバラに使っていたはずである。そして「マンガの絵」が極端に少ない。僕などは幼稚園の頃から「シルバー仮面(笑)」なんかをクレヨンで描いていたりした。

何が言いたいかというと、つまりこれは「誰かがノウハウを教えている」という事である。その人には美術の知識がある。それは当然小学校の先生方であろう。カードを作ってくれたその子達は、カードの装飾どころか、文章まで前の作品のを丸写しにしていた。先の紙芝居にしても、後で判ったが絵本の絵の丸写しだったのだ。僕は小学校2年生のときから「マジンガー」や「刑事コロンボ」の真似とはいえ、自分で話も考えて学芸会用の紙芝居を作っていた。(『市民文化祭』と演劇、衣装とか色々の<第1回>参照笑)教室の向かい側の廊下には、生徒達が「車椅子」を体験したレポートが模造紙に書かれて貼ってあった。これらの事はとても大切な事はあるのだが、はたして「子供達が望んだ物なのだろうか?」という疑問が持たれる。

「先に与えてから育てる」と言う方法も有効ではある。しかし例えある程度絵が上手くても、「何を描くか」と言う明確な意志がなければ、その作品は全く生きた物にはならない。「ボランティア」も、その対象となる人達の「痛み」が判らなければ、差しのべる手も深く強い物にはならないのではないだろうか。「人の痛みを知る」ためには、「自分が痛みを知る」ことを体験しなければならない。「痛み」や「苦しみ」を感じる機会が、今の子には少ないのではないかと感じてしまうのだった。

数々の障害事件等も含め、学校側はとても難しい立場にいる。しかし本当は当の子供の両親達が「手抜きをしている」だけに過ぎない。更に多くのカリキュラムをこなさなければならない学校側としては、今のやり方が「精一杯の努力」であると思う。

しかし今の子供達は余りにも多くの物達を与えられ過ぎて、心が「受け身」になってしまっている。「痛み」や「苦しみ」を知る機会も余りにも保護され過ぎて少なくなっていると考えられる。個性を生む「言葉」なりの表現、「産みの苦しみ」というものも味わっておかないと、後の人生で路頭に迷うのはその子供達なのである。「何の為に生きるのか」なんていうことを明確に意識して生きている大人は少ない。自分の人生は「自分で答えを出して」生きて行かなければならないのではないだろうか。

このクリスマスカードの企画にしても、僕の母校の生徒達が参加表明をしてくれたそうである。わざわざ僕達の施設まで訪問して話を聞いてくれるという事で、僕は大感激をしてその準備を進めていたのだが、その当日の二日前になって「別のボランティアをしたい」と言って断ってきた…。

先の「手抜き子育て」をする親も、「ボランティア遊び」をするこどもたちも、

『も〜っと!おジャ魔女どれみ』を見て『心(ハート)』を学べ!!

と言いたい!!

 

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