<「ウテナvsキューティーハニー」の始動>

「初代TV版キューティーハニー」が、僕の「最愛の人」になった理由は色々ある。「リハツで、芯が強く、美人でセクシーで可愛い」、僕が持っている「ハニーちゃん」のイメージである。これは彼女の声を吹き込んだ「増山江威子サン」と、主題歌&挿入歌を歌った「前川陽子さん」のイメージによるところが強い。「荒木伸吾先生」のクリクリしたおめめで「ハニーちゃん」に見つめられ、プリンとかわいい「ボインちゃん」を見てしまうと、「ウーモーたまりませーん!(失礼)」となってしまうのだ!演劇的な舞台背景のような美術、サイケデリックな映像。そしてファッション。ファッションと言っても、ピエールカルダンなどのエッセンスが少しだけ入っているように見えただけで、ベルボトムやパンタロンなんかにしても、当時の「TVマンガ」の女の子も同じ様なスタイルをしていたはずである。しかし僕にとって他を圧倒して「ハニーちゃん」がファッショナブルでカッコいいと思うのは、その装いと共に「美しさ」「艶ややかさ」「可愛さ」を見せてくれたこと。パンサー戦闘員の拳銃の銃撃をヒョイヒョイとかわし、後ろでで相手の手首をひねりながらオンステージで歌い続ける「ミスティーハニー」のカッコ良さ、「怖い顔の整形手術を」と脚線美をチラリと見せる「ファンシーハニー」のセクシーさに参ってしまったのだ。

東京で「デザイン部補佐」をしていたときに、「Q−teyハニー」の連載が始まる。雑誌の意向もあるのか、「セックスシンボル」的色合いが強くなり、性格も「天然系」になっていた。組織で闘う、甲冑を身につける、マッスルポーズをとる、これらは僕には合わなかった。夢破れて実家に帰ってから、「新キューティーハニー」をレンタルビデオで観る。当時上映された「BATMAN」の影響を受けた設定と、それぞれの個性を持って現れるパンサークローはいいと思った。最も原作のダイナミックのイメージに忠実な作品であったが、途中クヨクヨしてチョッケイ君に励まされたり、羽根を付けて「天使」にしてしまったのが合わなかった。

父の紹介で嫌々行っていた某「活力ある地域を築く団体」での活動が本格化した頃、「キューティーハニーF」の放映が始まる。まずは「如月ハニー」ちゃんがオドオドした少女だったのがもうダメだった。僕のイメージでは、「ハニーちゃん」はミーハーで「アラいい男ね!」と言う事はあっても、まず「王子様に憧れる」ことはない。それは意識してはいないが「自分が一番」と思っているからである。その後の作品はあまり見ていないので、その後に。「F」も「必殺技」だけ使わせていただくので、一応全部観なければと思っている。

「初代TV版キューティーハニー」、つまり「増山ハニー」が「最愛の人」で、他は何故評価が落ちるのかというと、まずは「ハニーの性格」が全然違うのである。やや乙女チックで頼りなげなところや、話すと楽しそうな「天然系」は、多分客受けがいいからなのだろう。今DVDBOXで見直しても、「増山ハニー」は決して「おバカさん」ではない。当時の「007」などの影響もあると思うが、「キューティーハニー」は、「ハニーちゃんを最高に魅せる」お話なのである。他に余計なものはあまり必要がない。そして他のアニメやコミックでは、「初代TV版キューティーハニー」の様なアート的な演出や技術が観られないことである。これは他の「ハニー作品」のことではないのだが、コミック&ジャパニメーションの身内受けみたいな「ネタの使いまわし」をせずに、他の分野のいいところを積極的に取り入れて、ジャパニメーションの可能性を拡げていって欲しいと思うのである。「初代TV版キューティーハニー」が、ダントツに素晴らしい作品であるというわけではない。ただその「素材として」、「キューティーハニー」は他の作品では出来ない多くの魅力を持っていると思うのである。

「自分のホームページを作ればいい」と友人のHESE3は言った。実家の仕事も、某「活力ある地域を築く団体」での活動も言ってみれば「義理を果たしている」だけで、僕の望んだものではなかった。時間も縛りに縛られて、ストレスが溜まる一方だった。「なんとかならないか」と愚痴を漏らしたとき、彼はそう言ったのだった。いまさらパソコンも面倒くさいとためらう僕を無視して、彼は勝手に自分のホームページの中に、僕専用のスペースを作ってしまった。「なにをネタにしよう」となったとき、当時衝撃的に現れた「スーパーロボット大戦」にあやかって「ヒーローの対決もの」で行ってはどうかという話になった。彼のプランでは、毎週対戦するヒーローの組み合わせを「お題」として、掲示板で投票や対戦の内容を提案してもらい結果発表をする、というものだった。僕はヒーロー同士が対戦して勝敗が決まると、負けたヒーローのステータスに傷がつくところに抵抗があり渋っていた。そのとき彼が電話口で何気なく「ウテナとキューティーハニーを対戦させたら」と言ったのだった。

それまで局部的にしか見ていなかったアニメーションに、また「オタクレベル」までハマることになってしまったのは、某「活力ある地域を築く団体」のあるメンバーの人に、「エヴァンゲリオンって知ってる?」と聞かれたのがきっかけだった。僕は全然知らなかった。なにやら、日本経済新聞に「エヴァ」の解説を連載しているコーナーがあるとかで、「どんな作品なんだろう」とすでに「アニメオタク」と知られていた僕に聞いてきたのだった。それで・・・LDで全部そろえてしまった(笑)。「まごころを君に」を観に行ったときは、ショックでしばらく口が聞けなかったほどである。「エヴァ」のコラムで水玉さんが「エヴァとの出会いは恋愛に似て・・・」と書いていたが、僕もそんな感じである「愛しくて、憎い」作品である。

次に僕に衝撃を与えたのが、「少女革命ウテナ」である。これはHESE3に1〜4話をビデオで見せてもらい・・・まず真っ先にJAシーザー氏の歌曲の入ったCDを探し、そしてLDを全部そろえた。舞台美術的な美しく平面的な背景、ブラックなユーモア、抽象的な描写、脚本の良さ、絵の良さ!決闘の場面で流れる、JAシーザー氏の謎深く強烈な歌曲!どれも僕には未体験なものばかりで、「こんなものを描ける人がいるのか!」と大感激をしたものだった。映画も必要なかったのに、始発の電車で映画館に行き、一番乗りで並んだ。

電話口で何気なく「ウテナとキューティーハニーを対戦させたら」と言われた。さすがの「天上ウテナ」でも、「最愛の人」「キューティーハニー」お姉様は、「人間の4倍」の能力を持っているのだ。拳銃の弾もかわす動体視力と反射神経を持つ「ハニーお姉様」に、イカに「ウテナ」の「必殺突き」が早くても「当たるはずがない」のである。思い入れの違いもあって「格が違う(笑)」とまで思ってしまった。「相手にならないよ」と一笑して電話を切ったものの、「この組み合わせはいいな!」と僕的に思ってしまった。

「潔く、カッコよく生きていこう・・・」と言う、「輪舞〜Revolution〜」のフレーズが流れると、なぜか僕の頭に浮かんだのはバイクで突っ走る「ハニーお姉様」だった。「少女革命」といいながら、「ウテナ」が行った革命とは、とても小さなものだった。「男子生徒」の格好をし、「理事長代理」と「肉体関係(笑)」を、「姫宮アンシーの心を開いた」。で「増山ハニー」お姉様と言えば、カトリック系か何かの規律の厳しい聖チャペル学園を「ホイホイと脱走」し、男ばかりのパラダイス学園では、不良学生たちの番長になり簡単に治めてしまった。彼女にしてみれば、それもただの「日々の楽しみ」なだけで、「革命」ともなんとも思っていない。「潔く、カッコよく生きていこう・・・」を実現している人、「ウテナ」の物語に沿うなら、「永遠」をも手にしてしまっている人なのである!

主人公「天上ウテナ」の髪は「ピンク」。「主人公女の子の髪はピンク」は、「キューティーハニー」が元祖である!また両作共に、「舞台美術」のイメージを取り入れたビジュアルと、演出をしていることも新旧の共通点ともいえる。全ての能力を上回り、「王子様心」、男気あふれる「天上ウテナ」が、「お姉さん」と慕える人、結果的には孤独だったウテナに「救いの手」を差し伸べられる人、それは「ハニーお姉様しかいない」と!!僕は、この宇宙レベル級に勝手な思い込みによって、「ウテナVSハ二―」を書いてみようと思ったのだった!僕が「少女革命ウテナ」で一番好きなキャラは、「有栖川樹璃」。彼女と「ハニーちゃん」は「同学年」なのである!これも話を作るときの決定的な理由となった。「ウテナ」の世界に「ハニーちゃん」が現れるには、そこに「パンサークロー」が現れなければならない。そして、彼女たちは例の「決闘場」で対決しなければならない。これもすぐに思いついた。鳳学園に現れた二人の「パンサークロー」、彼女たちは「少女革命ウテナ」の世界ゆえに生まれた「パンサークロー」である。そして「ハニー」自身も、あの「決闘場」に入れる資格を持っていたのである。

「自分でハニーちゃんを描く」ということを、それまで考えたこともなかった。だが次々と制作される新作の「キューティーハニー」は、僕が憧れた「増山ハニー」ではないのである。「数十年後」とかいちいち世界を変えなくて、ただ「初代TV版ハニー」の「続き」をやって欲しいのだが、それはかなわない事らしい。今の動向から考えても、今後も僕の望む「増山ハニー」を描く人は現れないだろう。僕は密かに、自分の為にここで「増山ハニー」を描くだけである。
☆もどる☆