
<オタクは救うべきなのか?>
富野監督には、ジャパニメーションの現状を作ってしまったのは自分、という自覚があるらしい。「戦争ロボットもの」というスタイルを作ってしまったのは、「ガンダム」だろう。メカオタク、戦争オタク、キャラオタクなどがこれに付随し、「エヴァンゲリオン」も「ガンダム」「イデオン」がなければ誕生しなかったかもしれない。「イデオン」を観て、「人類不要論」的な見地にまで行ってしまった人もいるし、その様な設定やメッセージを持った作品も多くなった印象もある。筆者の場合は、中学校2年生で観た当時も「イデオン」でそういう思考には至らず、「運命の中でもがく人間の生命力」や「人の愚かさと美しさと愛おしさ」を感じて、この作品を一生愛する様になった。しかしこれも個人の解釈の違いであって、仕方のないことである。福井氏はそんな富野監督の姿勢を見て、「オタクなんて救おうとしなくていい」と言った。
理屈っぽい作品が多くなったのも、そうかも知れない。しかし「萌え系」「バイオレンス系」「ホラー系」等には、富野監督は関わっていない。これらの作品には、人間が潜在的に欲求し反応する要素が含まれている。『依存』を催す様にも仕組まれている。この様な生理的欲求に働きかける作品は、数字が読み易いし、定着率も高いだろう。しかしその合理的な手法を繰り返す限り、精神衛生的にもモラルも社会的評価も落ちていくばかりである。精神的に健全であり「美徳」を含んだものにしようとすれば、別の手法を取り入れた作品作りを行わなければならない。しかしその様な趣旨で作品づくりに取り組む者や、その様な世界を創造する能力を持っている作家が、ジャパニメーションには少ないのではないかというのが個人的な印象である。
情報過多である現在、「アニメおたく」というだけでなく、広い分野でも「おたく」と言われる人々が増え、また過去よりはそれらの人達が公になってきている経緯もある。それらの人同士が、ネットなりで同じ趣味の者でコミュティーを作っている。街中で寄り添う様に歩く若いカップルを見ると、あれも『依存』の関係に見える。コミュニケーションが苦手な者もいる。しかしそれは、個人の能力値のバランスにおいてその部分が劣っているだけで、他に優れた能力を持っているかもしれない。それが、その人物の社会的位置を維持させているかもしれない。
『依存』という言葉を使われてしまうと、筆者自身もそうであると言える。アニメなどの「空想生命体」と触れ合う事で、精神的バランスを取る事を「確信犯」的に行ってきたからだ。先日までのパン屋の仕分けのバイトで、筋肉痛だらけでサウナのマッサージに行ったら、「こんなにストレスを持っている人も始めて」と言われてしまった(笑)。ストレスを溜め易い体質なのか、ストレスを溜めているから今の体調になったのか。どちらにせよ、僕にとっては「空想生命体」との出会いは重要なものだったのだ。彼らはある意味、作家達の想いを背負って生まれてくる。故に観る側の我々の心に、深く手を差し伸べてくるのだ。
誰にでも、抱えている苦しみはあるはずである。時に悩みを打ち明けたとしても、個人のもっている最も重い苦しみを、恋人、友人、親などに背負わせる事はあってはならない。それを求める事は、人のつながりを維持できないものにしてしまう。異性との付き合いも全くない訳ではない。ただその経験でも、自分はかなり相手に『依存』してしまう人間であることに気付いてしまった。正直言って、今は相手の人の為に何かしてあげられるようなゆとりは全くない。
最近劇場版「少女革命ウテナ」のDVDを購入して、久しぶりに観た。そして今頃になって気づいた事があった。本来この作品のメインターゲットは「女の子」なので、筆者の様な男性はゲストみたいなものである。元「王子様」から逃れて、女同士で愛し合うウテナとアンシー。愛し合うは飾りであっても、「王子様は存在しない。友と強く生きて行け」というメッセージはあったのではないだろうか。女の子は、男の子に「王子様」を求めて魔女になり男の子を殺す。男の子は、女の子をカゴに閉じ込めて魔女にしてしまう。「王子様」は、物語が生み出した偶像である。対して「お姫様」も、物語が生み出した女性の偶像であろう。どちらも存在しないのに、お互いにそれを求めてしまう。男と女は違う生き物である。しかし手を取り合って生きていかねばならない。それには、違う生き方が要求されるはずである。
人間世界で満たされない部分を、「空想世界」で補っていく。これは『依存』であり、『おたく』である。その構成員の一人としては、何も言う事は出来ない。ただ富野監督の誠意は、受け取ったつもりである。ファッションもアートもミュージックも、映画も文学も…素晴らしいものはあまたにあるが、僕には「空想生命体」は必要なものであり、一生付き合っていくパートナーである。
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