『第3話 道場破り』

 

《前回までのあらすじ》

「ボクは、王子様になる!」「天上ウテナ」は、密かな思い出と決意を胸に名門鳳学園中等部に入学した。男子の制服を着る変わった女の子だった。ある日彼女は生徒会が行っている『決闘ゲーム』に巻き込まれ、『薔薇の花嫁』と呼ばれる「姫宮アンシー」を守る為に決闘場で闘う事になってしまう。だがその類まれな能力で彼女は決闘を挑んでくる生徒会メンバー達、「桐生冬芽」「西園寺恭一」「有栖川樹璃」「薫幹」「桐生七美」の挑戦をことごとく退けてきた。『決闘の勝者』には、『世界を革命する力』が与えられるといわれているが、果たして・・・?

最近は、その挑戦者が意外に人物になってきていた。「鳳香苗」「薫梢」「高槻枝織」「石蕗美蔓」「篠原若葉」「苑田茎子」・・・。彼らの胸には、『黒薔薇』がつけられていた。更にその陰で、謎の者達が暗躍をしていた。決闘に関わった生徒達を監禁し、尋問を掛け、他の生徒達にも暴行を加えていた。彼らもまた『世界を革命する力』を求めてやってきたのだった。転校生として、謎の女生徒2人が侵入してきた。これを受け入れた鳳学園理事長代理である「鳳暁生」は、対抗手段としてある一手を講じた。

次の日、その女の子は鳳学園に現れた。彼女の名は、「如月ハニー」。冬芽は彼女と謎の転校生2人の関係を探るべく、舞踏会を開催する事にした。華やかな衣装で舞踏会の注目を集めたハニー。しかし「神崎姫子」と「神武子」の登場と共に会の雰囲気も壊されてしまった。彼らに異常な危機感を抱いた西園寺は、真剣で切りかかるが巨体の武子の動作一つで会場の外まで吹き飛ばされてしまった!

《学生寮 東館》

〈ウテナ〉「なんだか凄い事になっちゃったねー。折角の舞踏会も、あの二人がブチ壊しちゃったし。…これからも、ずっとあんな事あんのかなぁ。」

ウテナ達は、生徒会メンバー達と別れて引き上げてきた。東館の寮に入るドアを開けると、何やら二階の方でバタバタと人が動き回っている音が聞こえてきた。

〈ウテナ〉「あれ?!誰かいるみたいだよ。」

ウテナは二階へ駆け上がった。隣の部屋の扉が開いている。

〈ウテナ〉「こんばんはー…」

覗いてみると、金髪の女の子が一人、部屋をほうきで掃いていた。

〈ハニー〉「あら。」

ハニーは掃く手を止めて顔を上げた。

〈ウテナ〉「…もしかして…あのー、ハニー…さん?」

〈ハニー〉「ええ。さっきのパーティーでも会ったわね。」

〈ウテナ〉「…本当に髪の色が変わるんだ。」

舞踏会の時は、ピンクだった。

〈ハニー〉「フフ、これが普段のスタイルなのよ。」

金髪をブラウンのヘアバンドで前を止めている。ロングで先がややロールしていた。白とオレンジのツートーンのワンピースを着ている。袖なしで襟はなく、胸元のカットは谷間が見える程大胆で、丈はショート。かなりセクシーなのだが、今のハニーが着ていると活動的でスポーティーなイメージになっていた。

〈ウテナ〉「なんだハニーさん、僕達とおんなじ寮なんだ。あ、手伝いますよ。姫宮、一緒にやろう。」

〈アンシー〉「はい。」

掃除を済ませた三人は、ウテナ達の部屋で一息いれる事にした。

〈ハニー〉「ありがとう、助かったわ。でもあのお部屋、使っていなかった割に綺麗で良かった。」

〈ウテナ〉「アー、あの部屋はちょっと前まで友達が使っていたんですよ。すぐに転校しちゃいましたけど。」

アンシーは、静々とハニー達のカップに紅茶を注いでいった。チュチュも何時の間にかどこからか帰って来て、ウテナ達の持って帰ってきたパーティーのケーキに顔を突っ込んでいる。

〈ハニー〉「そうだったの…。あ、私如月ハニーです。よろしくね。」

〈ウテナ〉「ボクは、天上ウテナです。こっちが姫宮アンシー、おんなじクラスなんですよ。そして、これが同居人のチュチュ。」

チュチュは、ケーキから顔を抜いてハニーの方を見た。

〈ハニー〉「よろしくね、チュチュちゃん。」

〈チュチュ〉「チュウ?」

チュチュはハニーの顔をしばらく見詰めていたが、またケーキを食べ始めた。ハニーは、そのチュチュが面白くて見ていた。

〈ウテナ〉「ハニーさんって、高等部の一年なんですよね。樹璃先輩が同じクラスだって言ってましたよ。」

〈ハニー〉「ええ、なんかカッコイイ人ね。同い年なのに、なんだかあこがれちゃうって感じ。…ウテナちゃんは何年なの?」

〈ウテナ〉「うっ、うっ、ウテナちゃんですか」

ウテナは突然笑い出した。ハニーとアンシーは、キョトンとして顔を見合わせた。

〈ハニー〉「あら。なにかおかしかった?」

〈ウテナ〉「い、いえ、すいません。今ままでウテナちゃんって言われた事なかったもんで。ボクと姫宮は中等部の二年です。…でもハニーさん、初日からバイク通学しちゃうなんて、とってもイカしてましたよ。」

〈ハニー〉「ああ、あれね。良く知らなかったのよ。お陰で樹璃さんに怒られちゃった。…でもウテナちゃんのその格好もイカしてるわよ。」

ハニーは、ウテナの男装の制服をチラリと見た。

〈ウテナ〉「ああ、そうですか?ありがとうございます。結構気に入ってるんですよ、これ。」

〈ハニー〉「…私達、なんだか気が合いそうね。私も明日からウテナちゃんみたいにしようかなぁ。でも、私にはちょっと似合わないかなぁ…。」

〈ウテナ〉「へー、そんな事言ってくれた人、ハニーさんだけですよ。なんだか嬉いなー。」

ウテナは素直に喜んだ。アンシーは、微笑みながら二人のやり取りを見ていた。

廊下で電話のベルが鳴り出した。

〈アンシー〉「あ、私出ます。」

アンシーは、部屋を出て電話に出た。

〈ウテナ〉「でもこの東館ってボク達だけだから、ハニーさんが来てくれて嬉しいですよ。明日から一緒に学校行きましょうよ。」

〈ハニー〉「そうね、よろしくね。…明日からは歩いて行かなくっちゃ。」

〈ウテナ〉「ハハハ!そうだ、僕もバイク乗ってみたいなあ。今度一緒に乗せてもらえませんか?」

〈ハニー〉「ええ、いいわよ。」

〈ウテナ〉「やったー!」

アンシーが、部屋に戻ってきた。

〈アンシー〉「ウテナ様、すいません。私、これからちょっとお兄様の所へ行ってきます。先に寝ていて下さい。」

〈ウテナ〉「え、そう。いいよ、いってらっしゃい。」

〈アンシー〉「すいません、御二人でゆっくりしていって下さい。失礼します。」

アンシーは、ハニーに頭を下げて部屋を出て行った。

ハニーは、カップを口へ運び紅茶を一口飲んだ。カップの底には、薔薇の模様が揺れていた。

〈ハニー〉「彼女、こんな時間からお兄さんに会いに行くの?」

〈ウテナ〉「ええ。彼女のお兄さんは、この学校の理事長なんですよ。両親がいないんで、お兄ちゃん子なんですよ。」

〈ハニー〉「へー、そう…。」

ハニーは、紅茶を一口飲んだ。

〈ハニー〉「そう言えば樹璃さんって、あなたとはちょっと違うみたいだけど、変わった制服を着ていたわね。舞踏会の時、同じ格好をしている人がいたみたいだったけど。」

〈ウテナ〉「アー、あれは生徒会の制服なんですよ。今夜の舞踏会も、彼らが企画したんですって。」

〈ハニー〉「へー、そうなんだ。そう言えば樹璃さん、お昼ご飯一緒に食べようと思って声を掛けたら、生徒会の仕事がある≠チて言ってたわ。」

〈ウテナ〉「この学校は、生徒会の力が強いんですって。樹璃さんもかなりの実力者で、先生達からも一目置かれているんです。フェンシング部の主将で全国レベルの腕前なんですよ。」

〈ハニー〉「フーン、なんだかやっぱりカッコイイわね!クラブも決めてないし、明日見学にでも行ってみようかなぁ。」

ウテナは、カップを口へ運び紅茶を一口飲んだ。

〈ウテナ〉「…そう言えば、さっきの舞踏会で二人の転校生がきましたよね。あの人達は、ハニーさん知らないんですか?」

〈ハニー〉「え、全然知らないわ。」

〈ウテナ〉「そうですか。あの二人は、昨日転校してきたんですよ。あの通りの雰囲気だから、すぐに学校で話題になったんですけど、…あんな事になるとは…。」

ウテナは、少し話題が良くなかったかなと気になった。カップを口へ運んで、紅茶を飲んだ。

〈ハニー〉「あらあら。」

ハニーは、チュチュを見て笑った。ケーキだらけでお腹を膨らませたチュチュは、満足そうにその場で寝てしまっていた。

〈ハニー〉「…私達も寝ましょうか。」

ハニーは、ウテナに微笑んだ。

《歩いて登校》

朝。ウテナは、アンシーが寮内を掃除する音で目覚めた。

〈ウテナ〉「ウーン…。」

〈アンシー〉「おはようございます、ウテナ様。」

〈ウテナ〉「ファー、…おはよう。」

パジャマ姿で洗面所へ行ったウテナは、寝ぼけ眼で歯を磨いた。廊下をアンシーがモップで拭いている。

〈アンシー〉「ウテナ様、今日はハニーさんの分までお弁当を作っておきました。お昼、一緒に中庭でででも食べましょう。」

〈ウテナ〉「ふあぁぁふおぉぉ…ふぉえふぁひひえ。(ああ、そう…それはいいね。)」

でもハニーがアンシーの弁当が食べれるのかと、ウテナは少し不安になった。コップに水を入れて、口をゆすいだ。

〈ウテナ〉「プァーッ、そう言えばハニーさん起きているかな。」

〈アンシー〉「そうですね。そろそろ起きていただかないと、朝食もありますから。」

ウテナは、ハニーの部屋のドアをノックした。

〈ウテナ〉「おはようございます、ハニーさん!起きてますかー?」

中からは返事がなかった。ウテナがドアの部を捻ってみると、鍵は掛かっていなかった。

〈ウテナ〉「失礼しまーす。」

部屋を覗くと、ハニーは二段ベッドの下でまだ寝ていた。

〈ウテナ〉「ハニーさん、朝ですよ!起きて下さい!」

ハニーは、少し寝ぼけているようだ。

〈ハニー〉「ふぁ〜ナッちゃん…もう少し寝かせて…。」

ハニーは、壁の方へ寝返り打った。ウテナは、ハニーの肩を揺すって耳元で怒鳴った。

〈ウテナ〉「ハニーさん!もう起きないと遅刻しますよ!」

ハニーは、びっくりして上体を起こした。少し回りをキョロキョロしてもとに戻った。

〈ハニー〉「あ、あら…私とした事が。」

ハニーも揃って、歩いて学校へ出掛けた。鞄をヤクザ持ちするウテナ、前で両手で持つアンシー、ハニーは右手で下げて持っていた。ハニーは、あの巨大なパフスリーブの半袖ブラウスと、ショート丈のプリーツスカート、女子用制服を着ていた。

〈若葉〉「ウッ、テ・ナ〜っ」

例によって、若葉がウテナに背後から抱き付いた。ウテナは、前のめりになって倒れそうになるのを踏ん張った。

〈若葉〉「あら?」

若葉は、ウテナに抱き付いてから見慣れない女の子がいる事に気がついた。

〈ウテナ〉「ああ、こちらは如月ハニーさん。昨日転校してきたんだ。ほら、あの早朝ライダーの人。」

〈若葉〉「ああ、あの大奥カットの人?」

〈ハニー〉「お、大奥カット?」

アンシーは、自分の口に手を当てた。

〈樹璃〉「やあ、今朝はバイク登校じゃないな。」

〈ハニー〉「あ、樹璃さん。」

樹璃が、彼女達の後ろから近づいて来た。

〈樹璃〉「昨日は、とんだ目に合ったな…」

サッと樹璃の表情が険しくなった。彼女の目線の先には、例の転校生二人が歩いていた。

先を歩く青い髪の女は、鳳学園の女子用制服を着ていた。スーパーモデル張りの彼女の体型に、その制服はアンバランスな感じであった。後の大女は、さすがに体型に合う制服がないのか、昼間から紫のマントを羽織っていた。何とも奇妙なものなのだが、それ以上の緊張感が見るものを脅えさせる。二人は何事もない様に、ウテナ達を足早に追い抜いて行った。

〈ウテナ〉「…そう言えば、あの二人はどの寮に入ったのかな。」

〈樹璃〉「…うむ。聞かないな、それは。」

彼女達が歩く先の校門付近で、何故か生徒達が左右に分かれて入って行くのが見えた。どの生徒も、何やら顔をしかめて通り過ぎて行く様だった。

〈?〉「ハァ、ニィ〜ちゃ〜ん」

いきなり生徒達の中から、ガニマタの女が飛び出してきた。オレンジ系のフリルの付いたツーピースを着ている。上は、胸明きの大きな半袖ブラウス、下はフレアースカートだった。

〈ハニー〉「あら、アルフォンヌ先生!どうしてここに?」

アルフォンヌは、ハニーを見ると嬉しそうに自分のボールのようなバストを両手で揺すった。

〈アルフォンヌ〉「今日からこの学園で、臨時講師としてやとって貰ったのヨ〜ン!ア〜ン、ハニィーちゃんとまた一緒にいれるなんて、夢のようだワ〜ン!」

アルフォンヌは、ハニーに抱き付いて思い切り頬擦りをした。

〈ハニー〉「あ、あのう…アルフォンヌ先生…」

ウテナ達は、驚きの表情のまま固まっていた。

〈ハニー〉「せ、先生に会えたのは、私も嬉しいわ。でも皆さん見てるから…」

ハニーは、やんわりとアルフォンヌを引き離した。

〈ハニー〉「先生がいるって事は、ひょっとして…」

〈?〉「フッフッフッ、当然あたしもいるワよ」

おカッパ頭に、つり目の眼鏡を掛けたガニマタ女が現れた。そのイカツい顔にはアンバランスな、ピンク系のスーツを着ている。上は、テーラードジャケットにリボンタイ、下は、プリーツスカートだった。

〈ハニー〉「み、ミハル先生」

〈ミハル〉「こぉ〜らハニー!この私がいなくなったからって、また脱走したりしていないだろうねぇ?でもこれからは、またビシビシバシバシやってやるよぉ〜!イッーヒッヒッヒ〜!」

辺りの生徒達は驚きというよりも、何か脅えているようにも見える。

〈七実〉「…み、醜い。醜すぎるワ。この私のドラマ世界を著しく汚しているワ!」

何時の間にか七実達が、ウテナ達の後ろにいた。七実茎子、優子、愛子たちは、自分の口にハンカチを押し当てていた。

〈ウテナ〉「…おいおい。」

《高等部1年○組 授業中》

ハニーは授業には興味がないのか、隣の席をジイッと見ていた。隣には、樹璃が座っている。今朝クラス担任が「転校生の為」と、ハニーを樹璃の横に席替えさせたのだった。樹璃は、前の黒板に見入っていた。凛々しい横顔である。しばらくして、彼女は横目でハニーの方を見た。

〈樹璃〉「…私の顔に、何か付いているのか?」

〈ハニー〉「いいえ。」

ハニーはニッコリと笑った。樹璃は、彼女の態度にどう反応していいのか判らなかった。

 

《世界の平和は誰が守る》

卵の殻を破らねば、

ひな鳥は生まれずに死んで行く。

卵は世界、我々はひな鳥だ。

世界の殻を破らねば、

我らは生まれずに死んで行く。

世界の殻を破壊せよ!

「世界を革命する為に」

冬芽〉「昨日の舞踏会では、あまり期待できる結果を得ることがでなかったようだな。」

青空は、巨大なドームシアターのようだった。辺りから突然サイレンの音が鳴り響き、群衆の叫び声、混乱の音が聞こえ始めた。左右に傾くビルの大群がシルエットで伸び、その中から大怪獣ケロポン(けろっぽん)が姿を現した!

〉「ええ。二人の転校生が、何かとてつもない力を秘めた存在である事は示されましたが、その素性等については、何も手がかりとなるようなものを掴む事は出来ませんでした。」

〈ケロポン〉「ゲロゲロォォ〜ッ!」

ケロポン(けろっぽん)の口から炎が噴き出され、ビル群を焼き払った!辺り一面は、火の海となってしまった!

〈冬芽〉「神崎姫子と郷武子。彼女達の話し振りからして、近い内に我々と何らかの関わりを持ってくる事になるだろう。」

突然画面のフレーム外から飛び込んできたように、巨大なチュチュが現れた。額から後頭部までの中央線が、鋭く盛り上がっている。

〈チュチュ〉「チュワッ!」

チュチュは、両手を前に上げて構えた。

〈樹璃〉「如月ハニー…彼女も何か底知れない。」

〈ケロポン〉「ゲロゲロォォ〜ッ!」

ケロポン(けろっぽん)の口が徐々に伸び始め、上顎と下顎が巨大なハサミの様になった。巨大ハサミでチュチュを挟み込むと、天高く差し上げた!

ババ〜ン

〈冬芽〉「しばらくは、様子を見るしかないか。」

ケロポンの巨大ハサミが開くと、チュチュはその口の中に滑って落ちて行く!

〈チュチュ〉

「チュ!チュ!チュ!チュ!チュ!チュ!チュ!チュ!チュ!」

チュチュはその急な坂を必死に駆け上り、脱出に成功した!

〈幹〉「しかしあの二人が事を起こしてからでは、我々の力では対処できないのではないでしょうか。」

〈チュチュ〉「チュワ!チュワッ!」

チュチュは地面に降り立つと、両手を「+(ばつ)」型に交差させた!チュチュの両手から光る輪が飛び出し、それが広がってケロポン(けろっぽん)に届くまでに巨大になっていくつも命中した!

ピコピコ〜ン

〈樹璃〉「こんな大事な時に、西園寺の奴は何をしているんだ?復帰したばかりだというのに、生徒会の招集にも応じないとは…。昨日の事で休んでいるのか?」

〈ケロポン〉「ゲロゲロ〜ッ」

チュチュの必殺光線で、ケロポン(けろっぽん)は大爆発を起こした!

パパン!パン!パン!パパン!

…花火の様だ。

〈幹〉「いえ。西園寺先輩は、今朝も登校しています。」

チュチュの胸のライトが点滅している。チュチュは、ゆっくりと空を見上げた。

〈チュチュ〉「チュワッ!」

空に飛びあがったチュチュは、そのまま小さくなって星になった。

〈幹〉「あ、終わりましたね。」

 

VS西園寺恭一》

剣道場。西園寺は、木刀を正眼に構えている。気合とともに、五回面打ちの素振りをした。軽く動いているようだが、素早いスピードで連続打ちが行われた。イメージの相手の動きに合わせて、上段で構え次の攻撃の摺り足を行う。

〈?〉「なかなかお見事な動き。」

〈西園寺〉「誰だ?」

足音なく剣道の防具を身につけた者が、道場に入ってきた。

〈防具の者〉「昼食の間も惜しんでの稽古とは。剣の道に真摯な方ですね。」

〈西園寺〉「…お前、この前の奴か?」

防具の者は、黙って竹刀を構えた。

〈西園寺〉「…ムッ?!」

感じ取った気配に、西園寺は反射的に動いた。構えていた上段のまま、一気に木刀を振り降ろした!しかし手応えはなかった。相手は切っ先をかわして横に動いていた。

〈防具の者〉「真剣の一撃は、兜をも切る力がある。フェンシング等で受けれるものではない。たかが胸の薔薇を散らすのであれば、一掃の事相手の肩ごと切り裂いてしまってはどうかな?」

〈西園寺〉「きっ、貴様っ?!」

西園寺は、本気になった。おそらく真剣であれば、相手を切り裂く一撃だった!

〈西園寺〉「うわあぁぁぁっ!」

*次回第4話 『理事長室』

 

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